top of page

2024年度活動方針

1 私たち消防職員をとりまく状況

【日本国内における情勢】

新型コロナウイルス感発症(以下「新型コロナ」という。)について世界保健機機(WHO)がパンデミック(感染症の世界的大流行)を宣言して以降、全世界で感染者が爆発的に増加し、死者も多数発生し複数の変異株の派生もあり医療はひっ迫し、世界経済にも大きな混乱をもたらしました。

 新型コロナは一定の落ち着きをみせ、日本政府も5月8日から感染症法上の位置づけを「5類」に変更するなど、完全には戻らないまでも回復の兆しを見せています。

 他方、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始し1年以上が経過しました。それに伴い、世界的にエネルギー供給の不安定化や価格の高騰、物価上昇による生活への不安・不満が広がっています。

 一方で、2023年連合春闘では大手企業を中心に賃上げが進み、3%を超える水準を獲得しましたが、今春闘で掲げた「5%程度」との目標には到達せず、依然として物価上昇には追い付いていません。大手企業と全労働者の割を占める中小企業との格差を是正することが必要であり、適正な価格転嫁も課題となるなかで取引関係の適正化も重要です。

 こうした中、総務省が公表した人口推計(2023年4月12日)によると、2022年10月1日時点の日本の人口は約1億2000万人(前年比75万人滅)と12年連続の減少、滅少幅は統計をとりはじめた1950年以降で最大であり、15歳未満の人口は約

1400万人と過去最低、75歳以上の人口は約1900万人で過去最高と、「少子・高齢化」「人口減少」が急速に進んでいることが頭著になっています。また、人口が増加したのは東京都だけであり、「東京一極集中」の流れが再び強まっている状況にあります。

【公務員・消防職場を取り巻く情勢】

 新型コロナの感染拡大や大規模な自然災害等、危機的な事態が次々と発生している状況下で、住民生活を支える立場にある地方公務員・消防職員に求められる役割は、これまで以上に重要なものとなっています。しかし、この間、地方公務員数は大きく減少し、発害時の即時対応などの難しさが明らかになってきています。

 公務員の定年年齢が2023年4月1日から2年ごとに1歳ずつ段階的に引き上げられ、2031年には65歳となります。総務省消防庁は、消防職場は加齢による職務遂行の困難、さらには適正な配置を検討すべき職種との認識のもと、抜本的な改善策について「定年引上げに伴う消防本部の課題に関する研究会」を立ち上げ、2022年11月に「定年引上げに伴う消防本部の課題に関する研究会報告書」を公表しました。自治体消防制度が確立してから70年以上が経過した現在の消防職場は、消防車両や個人装備品などの資機材は小型軽量化、省力化が進み性能も飛躍的に向上しましたが、 加齢による体力等の衰えを考慮し、定年の引き上げが適切に導入されるよう組織の総力をあげて取り組む必要があります。

2 具体的活動方針

 県消協は現在、9つの単協・1,159名の消防職員が加盟する国内でも大きな組織となっています。また、全消協へも多数の役員を選出し、活動の一翼を担っています。

私たちは全国の会員と県内の未組織消防職員の道しるべとなり、さらなる組織強化・拡大に取り組まなければなりません。

そのため、全消協役員経験者や各種の友誼団体等の協力・アドバイスを求めながら、これからの県消協活動の方向性を見出し、消防職員の生活と権利の向上、民主的で明るい魅力のある職場づくり、住民主体のより良い消防行政の確立を目指して、更なる活動を続けていきます。

(1)組織強化・組織拡大をめざして

 昨年は新型コロナが5月に5類感染症に位置付けされ、活動が通常程度に実施できるようになり県内未組織オルグ、消防学校初任科生の訪問オルグを実施しました。各プロジェクトチームの活動もコロナ禍で身につけたウェブ開催を取り入れ、ウェブ・対面開催を会議内容に合わせ使い分け実施いたしました。また、ジャパンタスクフォースを講師に招きウェブ配信による消火活動についての学習会を開催いたしました。さらには、田中三重県議会議員、三重県消防保安課、医療保険部医療政策課、病院事業庁と救急活動についての意見交換会を実施いたしました。今後も組織強化・組織拡大の方法を模索し、取り組みを継続します。

 組織強化では、各単協における活動実態やさまざまな情報の共有と提供、活動の停滞及び消滅のおそれのある単協への支援活動、ユース世代・女性会員が参画しやすい活動の模索、県消協・ブロック役員・執行部の担い手の育成・発掘に取り組みます。また、「組織強化委員会」において、協議会のメリットや存在意義を再確認し、事業を展開することで、県消協や各単協の活性化を図ります。

 組織拡大では、未組織消防の実想や題をもとに、実情に応じたプランの検討と高動の実施、全額物除は会を通じて各ブロック活動の全国への発面、ユース世代の組織拡大委員会への参画とオルグ活動の帯同、隣接ブロックへの応援要請と全消協役員・幹事の派遣要請、未組織消防の対象年組との連携体制の確立に取り組みます。

 消防職場の問題を改善していく上では、活動が役員任せにならず、消協会員全体で問題意職・解決の方向性が一致している必要があります。

 とはいえ、何らかの解決手段を持たない消防職員の集まりである、消協単独で解決を図ることは難しく、自治労県本部と問題を共有して連絡し、協力を求める取り組みは不可欠となります。また、県内消防職員の労働環境の改善、全体的なレベルアップに向け、未組織消防の組織化にも取り組みます。

 県内消防職員の意識啓発を図るため、広報誌「スクラム」の発行や県消協ホームページの更新は重要で効果的なツールであると考えます。県消協活動を多くの消防職員にリアルタイムでお知らせし、PRすることで今まで以上の組織強化・組織拡大に努めます。

(2)労働条件・職場環境の改善をめざして

 【賃金・労働条件の改善】

 県内の消防職場では、労働基準法等を無視した消防当局の恣意的な運用が見受けられます。各単協で課題を抽出し学習するとともに、情報共有を行います。

また、未組織の消防職場を含め、県内の消防職場から労基法違反や条例規定を無視した取り扱いを根絶する取り組みを進めます。

【無賃金拘束時間解消に向けて】

 消防職場の休憩時間、そもそも24時間フル稼働体制を維持しなければならない消防職場で職員に休憩時間を付与すべきなのか、休憩時間を含めて労働時間として扱うべきなのか、休憩時間の自由利用の原則が適用除外されていることが休憩時間中の労働を命じる根拠となりうるのかどうか、研究・検討を進めます。

【育児・介護休業等の取得推進】

 1月24時間、1年365日フル稼働体制を維持する必要のある消防職場において、長期に及ぶ育児・介護休業等が取得しやすいよう、県内消防本部の取得状況を調査し、各職場における取り組みを求めるとともに、総務省消防庁に対して、地方交付税基準財政需要額の消防費用算定基礎において、これらの要員確保のため何らかの指置をとるよう要請することを全消協に求めます。

【人事評価制度への取り組み】

 個人より活動を基本とする現場活動、階級制度や昇任試験制度等のある中で、成績主義による人事評価制度のあり方について研究するとともに、県内外より情報収集を行い、その運用にあっては恣意的な評価がなされないよう取り組みます。

【定年延長・再任用制度に対する取り組み】

 定年年齢の引き上げと再任用の問題について、県内外の状況把握に努め、情報の共有化を図り、消防職場において高年齢職員・再任用職員が適する職域の拡大や労働条件について研究・検討します。

(3)団結権の獲得にむけて

 消防職員の団結権確立を含む公務員の労働基本権回復に向け、自治労三重県本部との連携を図りながら、官民労働者の総結集体である連合などの友誼団体への働きかけを、全消協とともに取り組みます。

 また、消協活動の中心を担う活動家を育成することを目的に、職場における間題を発見し、解決策を見出す能力を醸成する講座等に参加し、団結権が否認された中においても、様々な活動ができるよう取り組みます。

(4)消防職場の安全衛生の確立をめざして

【労働安全衛生対策】

 消防業務は24時間のサービス提供が不可欠の職場であり、長時間の無賃金東や深夜労働、そして現場活動は「静から動」への急激な身体負担を伴っています。このような労働条件下で、質の高い消防サービスを提供するためには、これまで以上に職場の安全衛生体制、職員の健康維持・確保に向けた取り組みを喚起する必要があります。そのため、快適な職場環境の形成を目指し、当面の活動として労働安全衛生法を活用した職場点検活動に取り組みます。

 また、労働安全衛生法では、危険な状況である災害現場で活動を余儀なくされる消防職員も、一般職の地方公務員として位置づけられており、安全管理者の選任や安全委員会の設置対象職場となっておりません。こうした状況の改善を図るため、全消協とともに取り組みます。

【公務災害対策】

 消防職員の公務における死者や負傷者の発生する割合は、消防という職務の特殊性から、他の公務に従事する職員と比較して高い水準のまま推移しています。公務災害発生抑制目指した安全管理体制の確立を求めるとともに、公務災害中に発生した死亡・傷病事故については、公務災害の認定を求める取り組みを支援します。

【メンタルヘルス・ハラスメント対策】

悲惨で大規模な災害の発生が相次いでいるなか、PTSD発症の抑止など、今一度メンタルヘルスの重要性を認識し、犠牲者を出さない取り組みを継続します。

また、職場でのパワハラ・セクハラ等、あらゆるハラスメントの防止に向け、ハラスメントに対する意識・知識の向上に努め、その対策を検討するとともに相談体制の充実を図ります。

(5)より良い消防行政の確立をめざして

 警防、救助、救急、予防など消防業務に関することはもちろん、ハラスメントや働く環境についてなど、消防行政をより良くするためには何が必要かを組織強化委員会が中心となって検討し、学習会や関係団体との意見交換会などを企画・開催します。

【消防の広域再編への対応】

三重県は2019年3月に「三重県消防広域化及び連携・協力に関する推進計画」を策定し、2024年4月1日の推進期限に向け取組を進めており、県内でもはしご車や指令業務の共同運用について議論されています。

消防組織の再編・広域化にあたっては、地域住民に対するサービス低下を招かないことはもとより、消防職員の継続的雇用・身分保障や労働環境・労働条件の維持・向上が図られるよう近隣県等の動向を注視し取り組みます。

また、国の財政措置や広域的災害への対応なども考慮した、地域住民のための消防組織のあり方について研究、検討します。

【誰もが働きやすい職場環境の実現に向けて】

 現在、消防職場への女性消防吏員の採用や職域拡大の推進、施設や資機材など女性が働きやすい職場環境を整えること、職場への男女平等の啓発やすべてのハラスメントの防止にむけた教育を実施し、今も続く「男性職場」を見直しすることが求められています。また、男性の育児参加休暇や出産休暇、育児休業などの制度が浸透しつつあります。

県消協として、誰もがワークライフバランスを確立する上で、一人ひとりが能力を発揮しながら、平等に働きやすい職場とはどのような姿か、その実現のためにどのような取り組みが必要かなどを研究・検討します。

また、LGBT+等、セクシャルマイノリティについて情報共有し、理解を深めます。

bottom of page